超高速現象の世界 -応用物理の最前線ー

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 超高速現象の世界という言葉を聞いて読者のみなさんはどの程度の時間を思い浮かべるでしょうか。おそらく普段認識する最も短い時間は「一瞬」とか「瞬間」という時間でしょう。これは、その言葉どおりにとると"まばたき(瞬き)するほどの短い間"という意味になります。まばたきの時間は、約10分の1秒ほどの時間ですが、これが人間の肉体が何かの反応を起こせるほぼ最短の時間です。たとえば、007ジェームス・ボンドは0.3秒で銃を撃つそうですが、これなどは人間が肉体的に反応できる一つの極限をあらわしています(もっともジェームス・ボンドは架空の人物ですが)。
 この0.1秒より速い時間というとどうでしょう。直接、身近なものとして認識できるかどうかはわかりませんが、オリンピックの100メートル走などでの計時に使われる100分の1秒単位の時間などが思い浮かびます。しかし、100分の1秒の時間単位を正確に把握するのはほとんど不可能か、知覚の限界に近いでしょう。
 その人間の知覚の限界を超えた極めて短い時間に起こる現象を超高速現象と呼びます。本書ではその超高速現象の研究について見ていきます。
 
 本書は講談社ブルーバックス「応用物理の最前線」の第2章「超高速現象の世界」を元に加筆しました。