高校数学でわかる半導体の原理(講談社ブルーバックス)
ISBN978-4-06-257545-4 2007年3月発行
第1章 半導体の秘密
第2章 キャリアの数は?
第3章 半導体の中の電流
第4章 pn接合とショットキー接合
第5章 世紀の発明 トランジスタ
第6章 光の世界へ
----------------------------------------
まえがき
半導体を使ったデバイスは読者の皆さんのまわりに充ち満ちています。デバイス(device)のもとの意味は「工夫したもの」とか「からくり」です。エレクトロニクスの分野でのデバイスは、トランジスタや半導体レーザーのような電子部品を指し、「素子(そし)」とも訳します。1947年のトランジスタの発明を起点にして、その後半導体デバイスは私たちの生活の周りに数多く登場しました。現在のみなさんの身近なところでは、トランジスタに加えて発光ダイオードや半導体レーザが活躍しています。
トランジスタは、テレビを含むあらゆる電化製品の中や、パソコンなどのコンピューターの中で働いています。発光ダイオードは、携帯電話のボタンを光らせたり、テレビなどのリモコンの信号を送っています。さらに、半導体レーザーは、現在の光通信の中心点存在として活躍しています。
ここではみなさんにとって意外でそしておもしろい半導体の世界を紹介したいと思います。これらの代表的な半導体デバイスの働きを基礎的なレベルから説明します。半導体の世界をのぞいてみたいという高校生のみなさんや一般の読者のみなさんにもお役に立てることでしょう。また、半導体デバイスについて、専門的知識を必要とする方も少なくないでしょう。したがって、大学レベルの「電子工学」や「半導体工学」の知識が得られるよう構成したつもりです。
それでは、現代社会を支える半導体デバイスの理解に向かっての一歩を踏み出しましょう。
----------- 訂正 ---------------------
p. 39の3行目: 電荷(電気素量)→ 電荷の大きさ(電気素量)
p.102の1行目: 電子の電荷です。→ 電子の電荷の大きさです。
p.139の一番上の式の積分範囲の下限:
p.192の下から5行目: 上図→左図 p.193 1行目: 下図→右図
p.203の下から7行目: 波長光が→ 波長の光が
(以上第1刷まで。 ↓p.28 図1-3 差し替え)
*** Q&A ***
Q. 真空管に置き換わる電子デバイス(後のトランジスタ)の研究を発案したのはケリーで、その研究のためにマサチューセッツ工科大にショックレーをスカウトに行ったのではないか?
A. ショックレーの1976年のレビュー論文「接合トランジスタ着想への道程」 IEEE Transactions on electron devices, ED-23, 597 (1976) によると(多少意訳ですが)
ケ リー博士は、(マサチューセッツ工科大の)私を訪問して、「電話システムに電気スイッチを導入」することがどれほど重要であるかを訴えた。彼が言うには、 ダイアルすると交換機の中で金属接点が動作するが、その金属接点が電子デバイスに置き換わるときが来るのを待ち望んでいるということだった。
(中略)
1938年か1939年ごろ、私にある可能性が思い浮かんだ。それは、ケリー博士が思いついた電子スイッチを実現するために、彼が考えていた真空管ではなく、固体物理学の現象を用いるというものだった。
と記載されています。本書では、ショックレーのこの回想を採用しました。
*** シリコンバレー ***
シリコンバレーのインテル社
左側が、ミュージアム(ただし、鞄などの持ち込み不可でロッカーもありませんでした。セキュリティのため?)ビルの名称は、「ロバート・ノイス ビル」です。
ショックレーが後年、教授になったスタンフォード大学 2003年1月