高校数学でわかる光とレンズ (講談社ブルーバックス)

光の性質から、幾何光学、波動光学の核心まで 

ISBN9784062579704  2016年5月発行

 

第1章 光の性質
第2章 凸レンズと実像の関係
第3章 カメラと目
第4章 なぜ拡大できるのか -虫メガネ、望遠鏡、顕微鏡ー
第5章 近軸近似と光線追跡
第6章 波としての光 -波長、屈折率、光路長(アイコナール)の関係ー
第7章 単色収差
第8章 色収差
第9章 回折と分解能

 

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はじめに

 私たちの身の回りに満ち満ちているもの、それは光です。目から得られる情報は、多くの生き物にとって日々の生存のために極めて重要です。光によって目の奥の網膜に形成される像によって、対象物の形、色、距離などの情報がもたらされます。

 人類は長い間、「見ること」については肉眼が持つ能力そのものに頼ってきました。しかし、16世紀のヨーロッパでレンズを使う拡大鏡、顕微鏡、望遠鏡が発明されてから、人類が見ることができる世界は広がり始めました。従来見られなかったものを見られるように変えること、それは光学と呼ばれる学問が持っている大きな魅力の一つです。また、19世紀にはカメラが発明されて、映像の記録が可能になりました。記録された映像は、時間と空間の両面に広がり、いまや世界中の人々が同一の映像をほぼリアルタイムで見ることができます。しかも、それを人類の文明が続く限り、かなりの未来まで伝えることができます。ここにも、光学が大きく貢献しています。

 本書の前半では、光を光線として扱う幾何光学と呼ばれる分野を解説し、特にレンズの働きを明らかにします。光学機器としては、カメラやメガネ、それに望遠鏡や顕微鏡が大活躍しています。このレンズに関わる物理を基礎から知りたいと思っている方は多いことでしょう。カメラマンによって重要な被写界深度等を計算するエクセルファイルもブルーバックスの公式サイトに載せています。さらに本書の後半では波動光学に踏み込み、分解能を決める要因を明らかにします。

 本書は、大学の学部レベルの光学の基礎的な知識と体系を、高校数学の知識を身に着けていれば理解できるよう工夫してみました。今、大学で光学を学び始めたばかりの学生のみなさんや、大学の光学を早く覗いてみたい高校生のみなさん、それに少し本格的に光学を勉強してみたいと思っている社会人のみなさんのお役にも立てることと思います。本書を、読み進めるにつれて、光学の知識は一つずつ確実に読者のみなさんの頭脳に吸い込まれていくことと思います。また、ときには少し難しいところもあって、一瞬つまずくこともあるかもしれません。しかし、それを乗り越えて最後まで読み終えたとき、そこにはきっと新たな世界が見えていることでしょう。
 
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エクセルファイル
 
 ■被写界深度等の計算
 
------------- 訂正(第1刷りまで) -------------------

 

p.82,  2行目 
誤)ンズGで屈折して
正)ンズで屈折して

p.105,  7行目
誤)方向から星Bまでの出射角の
正)方向から点Bまでの出射角の

p.168,  下から9行目
誤)て位相が複数の球面波のそろう
正)て複数の球面波の位相がそろう